環境変数¶
本節では Git の環境変数について記す。コマンド git help git
の出力中に環境変数に関するまとまった記述がある。
概要¶
環境変数は、コマンドライン引数や .gitconfig
での構成のように、Git コマンドの振る舞いを制御する方法の一つだ。
普通はコマンドラインオプションか構成ファイルでできるならばそれらで済ませる。しかし、それらで実現できそうにないことをする必要が生じた場合には、環境変数で何とかできないかを模索したい。
リポジトリー関連¶
ヘルプドキュメントでは、Git はリポジトリー関連の環境変数として次のものを参照するとしている。これらの変数がすべてのコアコマンド群に影響する。また、サードパーティー製の Git フロントエンドツールがこれらの環境変数を当てにしている。
GIT_INDEX_FILE
GIT_INDEX_VERSION
GIT_OBJECT_DIRECTORY
GIT_ALTERNATE_OBJECT_DIRECTORIES
GIT_DIR
GIT_WORK_TREE
GIT_NAMESPACE
GIT_CEILING_DIRECTORIES
GIT_DISCOVERY_ACROSS_FILESYSTEM
GIT_COMMON_DIR
GIT_DEFAULT_HASH
以下、興味のあるものだけ記す。
GIT_INDEX_FILE
リポジトリーのインデックスのパスを示す。通常はこの値をセットしないことによって、パス
$GIT_DIR/index
をインデックスとして採用する。GIT_OBJECT_DIRECTORY
リポジトリーのオブジェクト格納ディレクトリーのパスを示す。この直下に 16 進数二ケタのディレクトリーがズラッと並ぶようなディレクトリーのことだ。通常はこの値をセットしないことによって、パス
$GIT_DIR/objects
をオブジェクト格納ディレクトリーとして採用する。GIT_DIR
リポジトリーのベースディレクトリーを示す。通常はこの値をセットしないことによって、ディレクトリー
.git
をリポジトリーベースとして採用する。この環境変数と同じ働きをするコマンドラインオプションが--git-dir
だ。GIT_WORK_TREE
作業コピーのルートのパスを示す。対応するコマンドラインオプションは
--work-tree
だ。対応する.gitconfig
の構成項目はcore.worktree
だ。
コミット関連¶
次の環境変数はコミット履歴改竄の主役となるべきもので、たいへん有用だ:
GIT_AUTHOR_NAME
GIT_AUTHOR_EMAIL
GIT_AUTHOR_DATE
GIT_COMMITTER_NAME
GIT_COMMITTER_EMAIL
GIT_COMMITTER_DATE
EMAIL
まとめて説明すると、コミットログにこれらの変数の名前が表現する情報がそれぞれ記録される。
例えば自分だけがコミットする個人用のリポジトリーがここにあるとする。これはたった今よそのバージョン管理システムからコンバートしたばかりなので、すべてのコミットにおいて、ログメッセージ中の上述の情報を適切にリセットしたい。
それにはコマンド filter-branch
を用いる。環境変数の渡し方が特殊で、一般には git
の直前でセットするのだが、このコマンドはオプション
--env-filter=<command>
でそれを行う。[SO750172] で紹介されていた例を次に引用する:
bash$ git filter-branch -f --env-filter "
GIT_AUTHOR_NAME='Newname'
GIT_AUTHOR_EMAIL='new@email'
GIT_COMMITTER_NAME='Newname'
GIT_COMMITTER_EMAIL='new@email'" HEAD
差分関連¶
次の環境変数が差分コマンドに関連する:
GIT_DIFF_OPTS
GIT_EXTERNAL_DIFF
GIT_DIFF_PATH_COUNTER
GIT_DIFF_PATH_TOTAL
以下、興味のあるものだけ記す。
GIT_DIFF_OPTS
差分コマンドにおける
--unified=<n>
や-U<n>
オプションと同等。変更行の前後n
行をついでに出力するかを指定する。こちらでの定義のほうが、コマンドライン引数での指定よりも優先度が高い。GIT_EXTERNAL_DIFF
差分コマンドに既定の差分プログラムではなく、外部プログラムを実行させるように設定できる。「外部プログラム」と書いたが、下の形式で呼び出すようなので実際にはラッパースクリプトを指定することになりそうだ。
bash$ "$GIT_EXTERNAL_DIFF" old-file old-hex old-mode new-file new-hex new-mode
残りの変数は GIT_EXTERNAL_DIFF
での処理中に自動的に設定される。
その他¶
どの括りにも当てはまらない環境変数を次に列挙する:
GIT_MERGE_VERBOSITY
GIT_PAGER
GIT_PROGRESS_DELAY
GIT_EDITOR
GIT_SEQUENCE_EDITOR
GIT_SSH
GIT_SSH_COMMAND
GIT_SSH_VARIANT
GIT_ASKPASS
GIT_TERMINAL_PROMPT
GIT_CONFIG_GLOBAL
GIT_CONFIG_SYSTEM
GIT_CONFIG_NOSYSTEM
GIT_FLUSH
GIT_TRACE
GIT_TRACE_FSMONITOR
GIT_TRACE_PACK_ACCESS
GIT_TRACE_PACKET
GIT_TRACE_PACKFILE
GIT_TRACE_PERFORMANCE
GIT_TRACE_REFS
GIT_TRACE_SETUP
GIT_TRACE_SHALLOW
GIT_TRACE_CURL
GIT_TRACE_CURL_NO_DATA
GIT_TRACE2
GIT_TRACE2_EVENT
GIT_TRACE2_PERF
GIT_TRACE2_REDACT
GIT_LITERAL_PATHSPECS
GIT_GLOB_PATHSPECS
GIT_NOGLOB_PATHSPECS
GIT_ICASE_PATHSPECS
GIT_REFLOG_ACTION
GIT_REF_PARANOIA
GIT_ALLOW_PROTOCOL
GIT_PROTOCOL_FROM_USER
GIT_PROTOCOL
GIT_OPTIONAL_LOCKS
GIT_REDIRECT_STDIN
GIT_REDIRECT_STDOUT
GIT_REDIRECT_STDERR
GIT_PRINT_SHA1_ELLIPSIS (deprecated)
以下、興味のあるものだけ記す。
GIT_PAGER
ページャーを指定したい場合にこれを設定する。値が空であるか、もしくは文字列
cat
であれば、Git はページャーを起動しなくなる。他にもページャーを指定する方法はあり、優先順位は次のようになっている:
環境変数
GIT_PAGER
設定項目
core.pager
環境変数
PAGER
これは差分表示などでページャーが出てくるのを防ぐのに使える。ページャーを一時的に無効にしたいならば次のようにすればいい:
bash$ GIT_PAGER= git diff
GIT_EDITOR
Git のコマンドでテキストエディターを開く状況すべてにおいて、ここでエディターのパスが設定されていれば、それを開く。
EDITOR
もVISUAL
もどちらも未定義の場合にGIT_EDITOR
が効いてくる。対応する.gitconfig
の構成項目はcore.editor
だ。こちらで十分。