第 1 章 解析序論

1.1. ドラクエ解析
1.1.1. 解析環境
1.1.2. ロムイメージファイル
1.1.3. 参考書籍

「ドラクエ命」は、数年前に記者が Windows PC で家庭用ゲーム機のゲームをプレイできるという驚愕の事実を知ったことから始まる。 記者は当時学生で、しかもろくに計算機の知識も教養もないものだから、エミュレーターの意義に素直に感動してしまった。 しかもエミュレーターはゲーム機のゲームを本物に再現するだけでなく、画像をキャプチャできたり、描画フレームレートを上げたりと、 ゲーム機以上の機能を提供する。記者はエミュレーターに魂を売ることを決めた。

記者はドラクエが大好きで、これ以外のゲームはほとんどプレイしていない。 「各シリーズの全データが見たいっ……!」というありきたりな理由で、 ゲームデータの全貌を解明するべく、まずは PAR コードによる改造から試みることにした。 以前からマニア誌の立ち読みで、PAR 改造というものの存在は知っていたが、 エミュレーターが PAR 改造をサポートしていることで、ようやく試すことができたのである。

図 1.1 Snes9X PAR Entry

Snes9X PAR Entry

PAR 改造は解析の知識がなくても、割と簡単にできる。 対象となるゲーム自身の知識が必要なだけだ。 記者の場合、SFC 版ドラクエ 3 で言えば、アイテム、モンスター、呪文、セリフ表を作成することに成功した。 といっても、せいぜい ID と名前の対応くらいがわかるだけで、ゲームデータの構造はわかるはずもなかった。 この暗黒の時代が 2, 3 年続いた。

そうこうしているうちに、ドラクエビューワを知ることができた。度肝を抜かれる。 数値的なデータはともかく、なんと画像データの抽出に成功しているではないか! 「そうか、ロムイメージファイルからデータを探す方法があるのか」と気付き、 PAR 改造からロムイメージファイルのデータの解読に方法をシフトしていく。 ……が、駄目ッ…! バイナリエディタでロムイメージを眺めるだけでは、どこに何のデータがあるのか 全然わからない……!

しかも思いも寄らぬことから記者のネット環境が崩壊してしまう。 これにより、隔週でのネットカフェ・漫画喫茶の巡業を余儀なくされる。

ある日メールをチェックしていたら、 やはりドラクエの解析をやっているという方からのメールが届いていた。 毎回メールには相当に突っ込んだ意見が書いてある。 秘密サイトをオープンするということで、お願いして見せていただく。 そこには想像を絶する解析の世界が拡がっており、 記者は初めてスーファミの逆アセンブリ技術の存在を知ることになる。 逆アセンブリにより、ドラクエのプログラムが眺めることができる―――ッ!

現在、この逆アセンブリをいろいろな意味でギリギリの線で行いつつ、 過去の文書を書き直しているところである。