幾何学と不変量 読書ノート 3/10¶
第 3 章 群の表現と不変式¶
3.1 有限群の表現¶
ベクトル空間 \(V\) に対する自己同型写像全体 \(Aut(V)\) を \(GL(V)\) と書く。
定義 3.1
表現 とは、群の準同型 \({\fn{\pi}{G} GL(V)}\) における組 \({(\pi, V)}\) のことをいう。
表現の作用素とは、群の元 \(g \in G\) に対する \({\pi(g)}\) のことをいう。行列。
表現空間とは、表現におけるベクトル空間 \(V\) のことをいう。
行列表現とは、行列で表される \({\pi(g)\pi(h)}\) のような表現のことをいう。
例 3.2: 対称群の置換表現
ある置換 \(\sigma\) に対して行列 \({T_\sigma \coloneqq (\delta_{i \sigma(j)})_{1 \le i,\ j \le n}}\) を定める写像は対称群の行列表現となる。これを置換表現といい、作用素を置換行列という。
例 3.3: 二面体群の自然表現
回転にせよ鏡映にせよ、一次変換であるので行列で表現できる。これを自然表現 or 定義表現という。
例 3.4: 正多面体群
同様の事情により、回転にも鏡映にも自然表現ができる。
\[\begin{split}\begin{align*} R_v(\alpha) & = I \cos \alpha + (1 - \cos \alpha) \bm{v} \cdot {}^t\!\bm{v} + \sin \alpha (\bm{v} \times \bm{e_1}\quad \bm{v} \times \bm{e_2}\quad \bm{v} \times \bm{e_3}),\\ S_u & = I - 2 \bm{u} \cdot {}^t\!\bm{u}. \end{align*}\end{split}\]
例 3.7: 巡回群 \({\ZZ / n \ZZ}\) の表現は一次元で \({k \longmapsto \mathrm e^{2km \pi i/n} \in \CC^\times = GL_1(\CC)}\) のようになる。
この写像が well-defined かつ準同型であることを一応確認しておく。
3.2 群の作用と表現¶
群 \(G\) と空間 \(X\) について準同型 \({\fn{\varphi}{G}Aut(X)}\) が存在するとき、 \(G\) は \(X\) に 作用する という。
このことを記号 \({G ^\curvearrowright X}\) で示す。
忠実な作用 であるとは、群 \(G\) が \(X\) の部分群であることだ。
空間がベクトル空間であり、かつ \(Aut(X)\) が線形同型全体であれば、作用と表現とは実質的に同じとなる。
補題 3.11: 空間 \(X\) 上の関数全体のなすベクトル空間を利用すると、作用から表現が構成できる。
例 3.12: 対称群の多項式表現
\({V = \CC^n}\) とし、\(n\) 変数多項式関数全部を \({\CC [V]}\) とする。さらにその \(d\) 次の同次多項式関数全体を \({R_d = \CC [V]_d}\) とする。これは対称群 \(\mathfrak{S}_n\) の \(R_d\) 上の表現となる。これを対称群の \(d\) 次多項式表現という。
演習 3.13: \(R_d\) の次元はいくつか。
\(d\) 次の同次 \(n\) 変数多項式関数の基底を考えるわけか。
3.3 不変式¶
多項式環 \(\CC [V]\) は環の構造と表現が両立している。
定義 3.14
\({f(x) \in \CC [V]}\) が \(G\) の不変式であるとは、任意の \({g \in G}\) に対して \({(\pi(g)(f))(x) = f(x)}\) が成り立つことをいう。
記号 \({\mathfrak{I} = \mathfrak{I}(V) = \CC [V]^G}\) で不変式全体のなす集合を表す。
例 3.15: 素朴な例 \({X = \set{1, \dotsc, n}}\) とその上のすべての関数のなすベクトル空間 \(\CC[X]\) と作用する群 \({G = \mathfrak{S}_n}\) とする。
\(G\) の作用に関する不変式は定数関数しかない。
\({X = A \sqcup B}\) として部分群 \({H = \set{\sigma \in G \sth \sigma(A) = A,\ \sigma(B) = B}}\) とすると、\({\CC[X]^H = \set{\alpha \chi_A + \beta \chi_B \sth \alpha, \beta \in \CC}}\) となる。
ここで \(\chi_A\) などは指示関数(測度論の教科書参照)とする。
例 3.16: 二面体群の自然表現
二面体群の作用で不変なのは、距離と原点を通る放射状の直線束。
定理 3.18: \(\CC[X]^G\) は 多項式環 \(\CC [V]\) の部分環である。これを不変式環という。
3.4 対称式¶
対称式とは \(\CC^n\) 上の多項式環 \(\CC[x_1, \dotsc, x_n]\) における n 次対称群の不変式である。
対象式には「基本対象式」「冪和対象式」「完全対称式」がある。
完全対称式だけ妙に数式化が面倒だ。
母関数 中の有理式をべき級数の形に(収束性を気にせずに)展開する。
演習 3.19: 基本対称式 \(e_m\) は \(m \le n\) のときに \({\sum_{k = 0}^{m - 1} (-1)^{m - 1 - k} e_k h_{m - k}}\) が成り立つので完全対称式の多項式として表せる。
定理 3.20: ニュートン
基本対称式と冪和対称式との関係式を示すのに微分を利用する。
演習 3.22: やっておく。
3.5 判別式¶
方程式 \({\sum a_k x^(n - k) = 0}\) の根を \(\xi_1, \dotsc, \xi_n\) とする。それに対して
差積を \({\Delta(\xi) = \Delta(\xi_1, \dotsc, \xi_n) = \prod(\xi_i - \xi_j)}\) で、
判別式 を \({D = a_0^{2n - 2} \Delta (\xi)^2}\) でそれぞれ定義する。
定理 3.23: 判別式がゼロであることと、対応する方程式が重根を持つことは同値。
演習 3.24: 二次方程式 \({a_0 x^2 + a_1 x^1 + a_2 = 0}\) の判別式を定義に従って求める。
実際に計算すると、途中で係数と根の関係式を用いることになる。
定理 3.25: \({D = (-1)^{n(n - 1)/2} a_0^{n - 2} f'(\xi_1) \dotsm f'(\xi_n)}\)
例 3.26: 三次方程式の判別式。ただし二次の係数がゼロのケース。
演習 3.27: 一般の三次方程式については変数変換 \({ \displaystyle X = x - \frac{A}{3} }\) により先の例のケースに帰着させる。
定理 3.28: 多項式の判別式は係数の同次多項式になる。
差積は Vandermonde の行列式 という表示方法もある。
演習 3.29: \(\Delta(\xi)^2\) の変形で、行列式の単純展開による。
演習 3.30: \(\Delta(\xi)^2\) の変形で、冪和対称式を成分とする行列式で表示する。