幾何学と不変量 読書ノート 5/10¶
第 5 章 平面上のアフィン変換とアフィン幾何¶
5.1 アフィン変換群とその応用¶
前章の直交行列を一般の正則行列にしたものが アフィン変換。線形変換と平行移動の合成。
演習 5.1: アフィン変換を \({g \in A_2}\) による行列の積としてみなすと、平面上の三角形の像で変換が決まる。
定理 5.2: 作用 \({A_2^\curvearrowright (\RR^2)^m: p \longmapsto gp}\) の不変式環 \(\CC[(\RR^2)^m]^{A_2}\) は定数関数しかない。
補題 5.3, 定理 5.4: アフィン変換は平行な直線を平行な直線へ写す。
5.2 相対不変式¶
定義 5.5: 相対不変式、指標。
作用 \({G^\curvearrowright X}\) においてゼロでない \({f \in X}\) が相対不変式であるとは、群の任意の要素に対して、次の性質がある定数 \({\chi_f(g) \in \CC}\) が存在することをいう。
\[f(gx) = \chi_f(g) f(x)\quad(x \in X)\]このとき \({\fn{\chi_f}{G}\CC}\) を指標という。
指標は一次元表現である。
例えば行列式の性質 \({\det(AB) = \det A \det B}\) は指標の性質であるといえる。
演習 5.6: ベクトル \(a, b, c \in \RR^2\) に対して関数 \({f(a, b, c) = \det(a - c\quad b - c)}\) を定める。この関数は \(A_2\) の不変式であり、指標 \(\chi_f\) はアフィン変換行列の線形変換部分の行列式と一致する。
いちおう断ってあるが、相対不変式全体は環ではない。
命題 5.7: 相対不変式 \(\varphi(x), \psi(x)\) とそれぞれに付随する指標 \(\chi_\varphi, \chi_\psi\) について次のことが言える:
積 \(\chi_\varphi \chi_\psi\) も相対不変式となり、その指標は \({\chi_{\varphi \psi} = \chi_\varphi \chi_\psi}\)
和 \(\chi_\varphi + \chi_\psi\) は \({\chi_\varphi = \chi_\psi}\) でなければ相対不変式ではない。
定理 5.8: 作用 \({A_2^\curvearrowright (\RR^2)^m}\) について。
相対不変式は行列式の同次積とその一次結合を取ることで全て得られる。
相対不変有理式とは、商 \({ \displaystyle \frac{\varphi(x)}{\psi(x)} }\) のことであり、指標は \({ \displaystyle \frac{\chi_\varphi}{\chi_\psi} }\) で得られる。ただし \(\psi(x) \ne 0\) のときに定義する量である。
不変有理式とは \(\varphi(x), \psi(x)\) の指標が一致している場合の相対不変有理式のことをいう。
例 5.9: 線分を \(s : t\) に内分する点 \(x\) について、直線外の任意の一点 \(z\) を取ることで、不変有理式で \(s, t\) を表せる。
同一直線上の線分比はアフィン変換によって変わらない。これは大事だ。
例 5.10: 三角形の符号付き面積 \({S = \dfrac{1}{2} \det(p - r \quad q -r)}\)
5.3 アフィン合同¶
- アフィン合同
三角形二個の間にアフィン変換が存在するとき、この両者はアフィン合同であるという。
定理 5.11: というより、任意の三角形は実際のところはアフィン合同である。
三点 \({(1, 0)}, {(0, 1)}, {(0, 0)}\) を頂点とする三角形と、一点が原点である任意の三角形との間のアフィン変換を構成することで証明とする。
定理の意味は、アフィン幾何において三角形は全て合同であるので、「アフィン幾何の定理」を証明するには、例えば正三角形一つに対して示せば十分であったりするということ。
定理 5.12: 三角形の各頂点をまったく移動させないような変換は恒等写像しかない。
証明方針は \({g: x \longmapsto hx + v}\) とおくと、原点を頂点の一つとする三角形に対して:math:{0 = g(0)} より \({v = 0}\) である。さらに \(\forall a, b \in \RR^2,\ {h(a b) = (a b)}\) より \({h = I}\) である。
定理 5.13: 同一線上にない線分の比は、アフィン変換によって一般には不変ではない。
どういうイメージ?
定理 5.14: 平面内の四角形がアフィン合同⇔対角線の交点による二組の対角線の内分 or 外分比がそれぞれ一致する。
系 5.15: 面積比での言い換え。
系 5.16: 数式での表現。
\begin{align*} \frac{\det(d - a\quad c - a)}{\det (d - b\quad c - b)} &= \frac{\det(d' - a'\quad c' - a')}{\det (d' - b'\quad c' - b')}\\ \frac{\det(a - c\quad b - c)}{\det (a - d\quad b - d)} &= \frac{\det(a' - c'\quad b' - c')}{\det (a' - d'\quad b' - d')} \end{align*}証明では十分条件を示す。4 点のうち 3 点を固定して考える。例えば \({a = a'}, {b = b'}, {c = c'}\) を原点、x 軸上の点、y 軸上の点として取る。 \(abdc\) の交点を \(e\) とすると、点 \(d'\) は結局直線 \(ae\) 上にある必要がある。
演習 5.17: 「一般の位置」にある n 点の配置が互いにアフィン変換で写り合う条件を考える。
5.4: 二次曲線のアフィン合同類¶
以前と同じ記号を使って議論する。ただしアフィン変換の作用は逆元の代わりに素の元を採用して書きやすくしておく:
\({\det X \ne 0}\) のときは標準形は \({\diag(\alpha, \beta, \gamma)\ (\alpha, \beta, \gamma \ne 0}\) の形となる。これは \({x^2 + y^2 = \pm 1}\) または \({x^2 - y^2 = \pm 1}\) を意味する。空集合か円か双曲線ということだ。
\({\det X = 0}\) のときは \({\pm x^2 + y = 0}\) を意味する。放物線だ。
補題 5.18: 二次曲線 \(C\) とアフィン変換 \(g\) および射影不変量 \(P_2\) について次の関係がある:
\[P_2(gC) = (\det h)^{-\tfrac{2}{3}} P_2(C).\]相対有理不変式。
証明方針は、不変量の定義式で \({\Delta \leftarrow \Delta (gA) = \det({}^t\!g\inv Ag\inv)}\), \({X \leftarrow {}^t\!h\inv Xh\inv}\) として計算すればよい。
\(P_2\) の符号で曲線の形状を分類できることは書いたが、この符号はアフィン変換が保存することがわかったと言っている。
定理 5.19: 非退化平面二次曲線のアフィン合同類は楕円・円、双曲線、放物線の三つしかない。
「実平面上の実アフィン変換群による作用である限りは」という断り書きがある。
アフィン変換に関する二次曲線の不変有理式は定数しかないらしい。
5.5 アフィン平面幾何の定理¶
冒頭のチェックリストが便利。
アフィン幾何の定理を証明するために、対象となる図形を単純なアフィン合同図形に置き換えて、使い慣れた初等幾何なり解析なりの技法を採用することができると言っている。
5.5.1 三角形と重心定理¶
定理 5.20: 重心定理
5.5.2 ガウスの内接楕円とその一般化¶
定理 5.21: ガウスの内接楕円。任意の三角形について、各辺の中点に内接する楕円がただ一つ存在する。
一意性の証明では、何か別の楕円があると仮定すると、あるアフィン変換が存在するということになるが、それは定理 5.12 によれば恒等写像であるはずだという論法になる。
定理 5.22: 一般バージョン。中点ではなく、同一内分比をとる点に内接する楕円がただ一つ存在する。
5.5.3 二次曲線の極線と極点¶
定義 5.23: 極線、極点
定理 5.24: 極線から極点を決めるバージョン。極点は極線の取り方によらず、一定の直線上に存在する。