付録 多様体の三角形分割の構成(展開) 2/2

  • 4. 多様体と \(\widehat{L}\) の交わり方と記述する。

  • 4.1 \({x \in M}\) について \(\sigma\)\(B_{8\delta_0}(x)\) に含まれる \(\widehat{L}\)\(k\) 単体であるとする。このとき:

    \[\sigma \cap M \ne \varnothing \implies k \ge N - n,\ T_xM \cap \sigma \ne \varnothing.\]

    1.7, 2.4, 3.1 を用いる。

    \({y \in \sigma \cap M}\) を考える。\(\sigma\) の面 \(\tau\)\({\dist(\tau, T_xM) \lt 2(1 + 2\rho_0)\delta_0 c}\) となり、その中で次元が最小のものを考える。

  • 4.2 再び \({x \in M}\) について \(\sigma\)\(B_{8\delta_0}(x)\) に含まれる \(\widehat{L}\)\(k\) 単体であるとする。このとき:

    \[\sigma \cap T_xM \ne \varnothing \implies k \ge N - n,\ M \cap \sigma \ne \varnothing.\]
    • 2.4, 3.1, 3.3, 1.7, 3.2 を用いる。

    • 4.1\(\sigma\) の面 \(\tau\) と同様のものを考える。

  • 4.3 \(\sigma^{N - n}\)\(\widehat{L}\)\({N - n}\) 単体であるとすると、これは \(M\) と高々一点で交わる。

    1.13.2 による。\({y, z \in \sigma^{N - n} \cap M}\) に対して:

    \[\begin{split}\begin{align*} \norm{(y - \pi(y)) - (z - \pi(z))} &\ge \eps\norm{\pi(y) - \pi(z)}\\ &\ge \frac{ac^2}{2^4}\norm{\pi(y) - \pi(z)}. \end{align*}\end{split}\]

    ここで 3.2 によると:

    \[\norm{(y - \pi(y)) - (z - \pi(z))} \ge 2c \norm{\pi(y) - \pi(z)}.\]

    \(\dfrac{ac^2}{2^4} \lt 2c\) だから \({y = z}\) が必要である。

  • 4.4 \(\sigma\)\(\widehat{L}\)\({N - n + k}\) 単体であるとすると、\({\sigma \cap M \ne \varnothing}\) であるならば、次のような \({N - n}\) 単体が存在する:

    各頂点 \(v\)\(\sigma\) の頂点を頂点とする。

    \({x \in \sigma \cap M}\) における \(T_xM\) と交わる \(\sigma\)\({N - n}\) 次元の面 \(\tau\)\(\RR^N/{T_xM}\) への射影によって \({0 = [T_xM]}\) を含む単体に写る(?)

    さらに \({\partial(\tau * v)\setminus\tau}\) の単体で \({0 = [T_xM]}\) を含む単体に写るものがある。それに対して \({? \cap T_xM \ne \varnothing}\) かつ \({? \subset B_{8\delta_0}(x)}\) により 4.2 を用いて \({? \cap M \ne \varnothing.}\)

  • 4.5 \(\sigma^{N - n} = {\langle v_0 \dots v_{N - n}\rangle}\)\(M\) が交わるならば、交点の重心座標は \(2c\) 以上である。すなわち、交点を \({\psi(\sigma^{N - n})}\) を書くと、

    \(\displaystyle \sum_{i = 0}^{N - n}t_i v_i\) と表すときに \({t_i \ge 2c\quad(i = 0, \dotsc, N - n)}\) である。

    \(v_i\) の対面 \(\tau_i = {\langle v_0 \dots v_{i - 1} v_{i + 1} \dots v_{N - n}\rangle}\) を含む affine 空間 \({P(\tau_i)}\) からの距離を考える:

    \[\dist(v_i, P(\tau_i)) \le \diam(\sigma^{N - n}) \le (1 + 2\rho_0)\delta_0 c.\]

    2.4 より

    \[\dist(\psi(\sigma^{N - n}), P(\tau_i)) \ge 2(1 + 2\rho_0)\delta_0 c.\]
  • 4.6 \(\displaystyle {\psi(\sigma^{N - n + k})} = {\sum_{i = 0}^{N - n + k}t_i v_i\quad(k \ge 1)}\) と書くとき、\({t_i \ge \dfrac{2c}{k_N}.}\)

    \(\sigma^{N - n + k} = {\langle v_0 \dots v_{N - n + k}\rangle \cap M} = \varnothing\) ならば、\(\tau_1, \dotsc, \tau_m \subset \sigma^{N - n + k}\)\({N - n}\) 単体であり、いずれも \(M\) と交わるとすると、 4.44.5 により:

    \[\psi(\sigma^{N - n + k}) = \frac{1}{m}\sum_{i = 1}^m \psi(\tau_i).\]
  • 5. 多様体の近くに単体複体 \(K\) を構成する。

  • 5.1 \(\widehat{L}\)\({N - n}\) 単体の列である \({\sigma^{N - k} \prec \sigma^{N - k + 1} \prec \dotsb \prec \sigma^N}\)\(M\) との交点 \(\tau_1, \dotsc, \tau_m\) を基に \(M\) の近くに単体複体 \(K\) を構成する。

    • 4.4 および 4.4\({\psi(\sigma^{N - n}),}\ {\psi(\sigma^{N - k + 1})}\) を用いる。

    • 上記単体の列に \(K\)\(n\) 単体 \({\langle \psi(\sigma^{N - k}), \dotsc, \psi(\sigma^N)\rangle}\) を対応させることができる。

  • 5.2

    • もし \({x \in M}\) に対して単体 \({\tau \subset K}\)\({\tau \subset B_{6\delta_0}(x)}\) を満たすならば、\(\tau\) を含む \(\widehat{L}\) の単体は \(B_{8\delta_0}(x)\) に含まれる。

    • 単体 \({\tau \subset K}\) のすべての頂点は \(B_{8\eps\delta_0}(T_xM)\) に含まれる。なぜならばどの頂点も \(B_{8\eps\delta_0}(T_xM)\) にある \(M\) の点の平均が \(\tau\) の頂点であるからだ。

    • それゆえに \(\tau \subset B_{8\eps\delta_0}(T_xM).\)

    \(B_{6\delta_0}(x)\) に含まれる \(K\) の単体は \(B_{16\eps\delta_0}(M)\) にも含まれる。

  • 6. 法束の射影の制限が求める三角形分割であることを示す。

    \({B_{16\eps\delta_0}(M) \subset U}\) としてよい。 1.2 の射影 \(\fn{p_M|K}{K}M\) が求めるものであることを示す。

  • 6.1 「\({T_xM \cap B_{8\delta}(x)}\)」と「\(B_{8\delta}(x)\) に含まれる \(\widehat{L}\)\({N - n + k}\) 単体」との共通部分は \(k\) 次元凸包である。

    • \({T_xM \cap B_{4\delta}(x)}\) に交わる \(\widehat{L}\)\(N\) 単体全体」と \(T_xM\) の共通部分をとる。すると「\(T_xM \cap B_{4\delta}(x)\) を含む集合」の凸包による分割が得られる。

    • この凸包による胞体分割に対する正則分割 \(K_1\) を考える。

    • \(\sigma^{N - n}\), \(\sigma^{N - n + k}\)\(\widehat{L}\) の単体であるとする。

    • \(\varphi(\sigma^{N - n})\)\(\sigma^{N - n}\)\(T_xM\) との交点とする。

    • \(\sigma^{N - n + k}\)\(T_xM\)\({\varphi(\tau_i)\quad(i = 1, \dotsc, m)}\) で張られる凸包となる。ここで \({\tau_i\quad(i = 1, \dotsc, m)}\)\(\sigma^{N - n + k}\)\({N - n}\) 面であり、\(T_xM\) と交わるものであるとする。

    • \({\varphi(\sigma^{N - n + k}) = \dfrac{1}{m}\sum{i = 1}^m \varphi(\tau_i)}\) とおく。

    • \(K_1\)\({T_xM \cap B_{4\delta}(x)}\) においては \(T_xM\) の単体分割を与える(単体複体である)。

      • \(\widehat{L}\) の単体列 \({\sigma^{N - n} \prec \sigma^{N - n + 1} \prec \dotsb \prec \sigma^N}\)

      • \(K_1\) の単体 \({\langle\sigma^{N - n} \sigma^{N - n + 1} \dots \sigma^N\rangle}\) とを

      対応させることができる。

    以下、\(K\)\(K_1\)\({T_xM \cap B_{4\delta}(x)}\) に交わる \(\widehat{L}\)\(N\) 単体全体との共通部分で考える。

  • 6.2 単体複体 \(K, K_1\) の間に頂点を頂点に写す単体写像 \({\psi(\sigma^{N - n + k}) \longto \varphi(\sigma^{N - n + k})}\) が定義され、単体複体間の同型を導く。

    \(K_1\) の単体分割は

    • \(T_xM\) の分割であり、

    • PL 多様体の条件を満たしている

    から、\(K\) も PL 多様体の条件を満たしている。

    • 図 A.5 の見方:平らな形状が \(K, K_1, T_xM\) だろう。

  • 6.3 単体複体 \(K_t\) を構成する。

    \[\langle\varphi_t(\sigma^{N - n})\varphi_t(\sigma^{N - n + 1})\dots\varphi_t(\sigma^{N})\rangle.\]

    \(n\) 単体とする。ここで \(\varphi_t\) は次の式で定義するものとする:

    \[\varphi_t(\sigma^{N - n + k}) = (1 - t)\psi(\sigma^{N - n + k}) + t\varphi(\sigma^{N - n + k}) \quad(0 \le k \le n).\]
    • 4.6 が根拠。

    4.54.6 と同様に \({\varphi(\sigma^{N - n}),}\ {\varphi(\sigma^{N - n + k})}\) の重心座標を考える。

    • 4.52.4 から \({\dist(\varphi(\sigma^{N - n}), P(\tau_i)) \ge 2^2(1 + 2\rho_0)\delta_0 c}\) より \({t_i \ge 2^2c \ge 2c.}\)

    • 4.6\({t_i \ge \dfrac{2^2c}{k_N} \ge \dfrac{2c}{k_N}.}\)

    \(K_t\) の頂点 \({\varphi(\sigma^{N - n + k})}\) の重心座標について \({t_i \ge \dfrac{2c}{k_N}.}\)

    • 内分点であるから。

  • 6.4 \(K_t\)\(n\) 単体 \({\tau^n = \langle\varphi_t(\sigma^{N - n})\varphi_t(\sigma^{N - n + 1})\dots\varphi_t(\sigma^{N})\rangle}\) について、affine 空間 \(P({\langle\varphi_t(\sigma^{N - n})\varphi_t(\sigma^{N - n + 1})\dots\varphi_t(\sigma^{N})\rangle})\)\({\psi(\sigma^{N - n + k + 1})}\) の距離は \({\dfrac{H\delta_0}{\sqrt{N}}\dfrac{2c}{k_N} \ge \dfrac{\delta_0}{\sqrt{N}}\dfrac{c}{k_N}}\) 以上である。

    • 6.3 を用いた。

    したがって \(\tau^n\) の辺長も \(\dfrac{\delta_0}{\sqrt{N}}\dfrac{c}{k_N}\) 以上である。「体積」にいたっては

    \[\dfrac{\delta_0^n}{n!\sqrt{N}^n}\dfrac{c^n}{k_N^n}\]

    以上である。

  • 6.5 単体 \({\sigma = \langle v_0 \dots v_k\rangle}\) に対して \(\sigma\) を含む \(\RR^k\) 上での \(\sigma\) の体積 \({\operatorname{vol}_k(\sigma),\ \sum_{i = 1}^k a_i(v_i - v_0)}\) について次の不等式が成り立つ:

    \[\abs{a_i}\norm{v_i - v_0} \le \dfrac{\norm{\sum_{i = 1}^k a_i(v_i - v_0)} \prod_{i = 1}^k \norm{v_i - v_0}} {k! \operatorname{vol}_k(\sigma)}.\]
    • 考えてみよう。

  • 6.6 \(K, K_1\) を結ぶ \(K_t\)\(n\) 単体 \(\sigma_t\)\(p_M\) の一点の逆像に横断的であることを示す。

    • \(\sigma_t\)\(\pi_{T_pM}\) と十分な角度をもって横断的であることを示せば十分。

    • \({\bm v_{(i, t)} = \varphi_t(\sigma^{N - n + i}) - \varphi_t(\sigma^{N - n})}\) とする。

    • \(\displaystyle {\bm u = \sum_{i = 1}^n a_i \bm v_{(i, t)}}\)\(\sigma_t\) 上の単位ベクトルであるとする。

      • 微妙な表現である気がする。

    • 次のような評価が 6.4, 6.5 を用いて得られる:

      \[\begin{split}\begin{align*} \norm{\bm u - \pi(\bm u)} &\le \dots\\ &\le \frac{a}{2c^{n - 1}}(1 + 2\rho_0)^n k_N^{n + 1} n \sqrt{N}^{n + 1}. \end{align*}\end{split}\]
    • \(a\) の値を調整することで \({\norm{\bm u - \pi(\bm u)} \le \dfrac{1}{2}}\) となり、「十分横断的である」ことが示される。

    • 1.2 より \(p_M\) の一点の逆像に横断的である。

    • \({t = 1}\) のとき \(\fn{p_M}{K_1}M\)\(n\) 単体の上で局所的に向きを保つ微分同相写像であるから、\({t = 0}\) でもそれは成り立つ。これが \(K\) の単体から \(M\) への微分同相写像となる。