彌永昌吉・彌永健一著『岩波基礎講座 基礎数学 9 集合と位相 I』より。 終章に目を通す。

§ZF 集合論、選出公理、連続体仮説

  • $(S10)$ 正則性の公理

    \[\tag*{$(S10)$} \forall a(a \ne \varnothing \implies \exists b(b \in a \land a \cup b = \varnothing)).\]

    言いたいことは「集合はそれ自身を含むことはできない」だ。 $x \cap \lbrace x \rbrace = \varnothing \implies x \notin x.$

  • Zermelo-Fraenkel の公理系とは、とりあえず本書の $(S1)$ から $(S10)$ を指す。
  • 実はこの 10 個は冗長だ。e.g. $(S5) \land (S6) \implies (S2).$ 他にもこういう導出がある。
  • $(S6)$ 分出公理を仮定しないと集合の差 ($\setminus$) を定義することができない。
  • Zermelo-Fraenkel の公理系とは、$(S1)$-$(S5)$, $(S7)$-$(S10)$ の 9 個を意味するものとする。
  • ZF 集合論の体系とか、単に ZF とか呼ぶのは、ここからさらに $(S8)$ 選出公理を取り除いたものを指す。 取り除いていないものを ZFC と呼ぶ。
  • 1938 Gödel:「ZF が無矛盾 $\implies (S8)$ と連続体仮説が無矛盾」を証明。
  • 1963 P. Cohen: 「ZF が無矛盾 $\implies$ ZF に選出公理を否定したものを合わせた体系が無矛盾」を証明。さらに
  • 「ZFC が無矛盾 $\implies$ ZFC に連続体仮説を否定したものを合わせた体系が無矛盾」を証明。 連続体仮説の正否は ZFC の体系からは独立している。
  • 1931 Gödel 不完全性定理「ZF に公理系を付け加えて得られる体系が無矛盾 $\implies$ 次のような論理的命題 $P$ が存在する: $P$ が証明不可能 $\land$ $\lnot P$ が証明不可能」
  • ZF 集合論の評価
    • この体系から $\N, \Z, \mathbb{Q}, \R$ を構成できるのだから、一定の妥当性はある。
    • 数学の各種理論への影響力は無視できない。