『岩波講座基礎数学 解析入門』演習ノート Part 14
小平邦彦著『軽装版 解析入門 I』『II』を用いて答え合わせおよび別解の検討をする。
- 第 25 問:方程式 $x - \cos x = 0$ は根が一つしかない
- $f(x) = x - \cos x$ とおくと、$f’(x) = 1 + \sin x \ge 0.$ 導関数から $f(x)$ が非減少関数であることがわかる。
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したがって、次の対応関係と中間値の定理から $f(x) = 0$ の根はちょうど一つだといえる:
\[\begin{aligned} f(0) &= -1 < 0,\\ f\!\left(\frac{\pi}{4}\right) &= \frac{\pi}{2} > 0. \end{aligned}\] - 解けなかった理由は関数の単調性を利用することに気付かなかったから。
- 第 26 問:Hermite 多項式が相異なる実根をもつこと
- 前半の $H_n(x)$ が $n$ 次多項式であることは示せている。
- 後半の証明も帰納法でうまくいくようだ: $H_{n-1}(x) = 0$ が実根 $x_1 < \dotsb < x_{n-1}$ を持つと仮定する。
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まず次の事実に注目する:
\[\forall k \in \{1, \dotsc, n - 1\} \quad \left.\frac{\mathrm{d}^{n-1}}{\mathrm{d} x^{n-1}} \mathrm{e}^{x^2}\right|_{x_k} = 0.\] -
さらに無限遠点での極限を考える:
\[\lim_{x \to \pm\infty}\left.\frac{\mathrm{d}^{n-1}}{\mathrm{d} x^{n-1}} \mathrm{e}^{x^2}\right|_{x} = 0.\] -
Rolle の定理により、開区間 ${(-\infty, x_1)}, {(x_1, x_2)}, \dotsc, {(x_{n-1}, \infty)}$ の間に次を満たす値が存在する:
\[\exists \xi_1 \in \Reals \quad \dots \quad \exists \xi_n \in \Reals \quad \left.\frac{\mathrm{d}^n}{\mathrm{d} x^n}\mathrm{e}^{x^2}\right|_{\xi_k} = 0,\\ -\infty < \xi_1 < x_1,\\ x_1 < \xi_2 < x_2,\\ \dotsc,\\ x_{n-1} < \xi_n < \infty.\]以上より、帰納法によって方程式 $\dfrac{\mathrm{d}^n}{\mathrm{d} x^n}\mathrm{e}^{x^2} = 0$ は相異なる $n$ 個の実根をもつ。
- $H_n(x)$ の定義により、同じことが $H_n(x)$ に対しても成り立つ。
- 敗因は Rolle の定理を応用することが思いつかなかったことだ。
- 第 28 問:Newton 法が収束すること
- $a < b_n < b_{n-1} < \dotsb < b_1 < b$ を示すわけだが、ここで $\forall x \quad f^{\prime\prime}(x) > 0$ が必要となるはずだ。
- 平均値の定理により
$0 < \exists \theta < 1 \quad f(a) = f(b) + f’(b)(a - b) + \dfrac{1}{2}f^{\prime\prime}(b)(b + \theta(a - b)) < 0.$
である。ここで次の評価から $f’(b) > 0$ であることがわかる:
- $f(a) < 0$
- $a - b < 0$
- $f(b) > 0$
- $f^{\prime\prime}(b)(b + \theta(a - b)) > 0$
- よって $b_1 - b = -\dfrac{f(b)}{f’(b)} < 0.$
- 以下、帰納的に $b_n - b_{n-1} < 0$ が成り立つ。 数列 $\lbrace b_n\rbrace$ は有界かつ単調減少なので収束する。その値は $a$ と $b$ の間にあることは明らかだ。
- 第 29 問:Jensen の不等式
- 帰納法で解いたが、解答例は不等式が成立することを直接示している。
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数列の重心を文字で表しておくと答案の見栄えがする。
\[\xi = \frac{1}{n}\sum_{k = 1}^n x_k.\] -
凸関数であることを利用すると、Taylor 展開の一次の項までと評価できる:
\[f(x_k) \ge f(\xi) + f'(\xi)(x_k - \xi)\quad\because f^{\prime\prime}(\xi) > 0.\] - あとはこの不等式を $k$ について $1$ から $n$ まで和を取れば証明は終わる。
- 第 34 問:${\vert\sin x\vert}$ の広義積分
- 面倒なのでパス。$\mathrm{e}^x \sin x$ の原始関数は Euler の公式を利用しても面倒だ。
- 第 37 問:積分版 Jensen の不等式
- 区間 ${[a, b]}$ を細分する:$a = a_0 < a_1 < \dotsb < a_n = b.$
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いかにもな仮定があるので第 29 問の不等式を利用できる:
\[\varphi\left(\!\frac{f(a_1) + \dotsb f(a_n)}{n}\!\right) \le \frac{1}{n}(\varphi(f(a_1)) + \dotsb + \varphi(f(a_n))).\] -
左辺の引数を次のようにして、定積分に変形する:
\[\begin{aligned} \frac{f(a_1) + \dotsb f(a_n)}{n} &= \frac{1}{b - a}\frac{b - a}{n} \sum_{k = 1}^n f(a_k).\\ \therefore \lim_{n \to \infty}\frac{f(a_1) + \dotsb f(a_n)}{n} &= \frac{1}{b - a} \lim_{n \to \infty}\frac{b - a}{n} \sum_{k = 1}^n f(a_k)\\ &= \frac{1}{b - a} \int_a^b \! f(a_k)\,\mathrm{d}x. \end{aligned}\]右辺も同様にする。
- 第 38 問:級数の分配法則みたいなもの
- 意外なことに $\varepsilon$ 法で証明している。本文の流れを利用しないのか。
- 第 39 問:Gauss の判定法の適用
- $\dfrac{a_n}{a_{n+1}}$ の展開を間違えたかもしれない。
- 第 40 問:Raabe の判定法
- 本書の Raabe の判定法の主張は、私が調べたものよりも条件が緩和されているが大体同じ。
- 今日記を読み返したら、紙に書いた内容をテキストにし切れていなかった。 こういうものが出ると記憶に定着しなくなりがちなので注意したい。