『岩波基礎講座 基礎数学 集合と位相』学習ノート Part 4
彌永昌吉・彌永健一著『岩波基礎講座 基礎数学 9 集合と位相 I』より。
- §3.1 関係、同値関係、整数
- 同値関係とは関係であって、反射律、対称律、推移律をみたすものだ、等々。
- 問題 3.1 は群論で言う軌道を思わせる。
- 代表元、同値類
- 集合の直和
- 本ノートでは記号 $\sqcup$ 系を採用する。
- 商集合:集合 $a$ に同値関係 $f$ が定まっているときに $a/f \coloneqq \lbrace X \in 2^a\,\mid\,\exists x (x \in a \implies X = f(x))\rbrace$
なる集合が定まる。
- $a = \bigsqcup a/f$ と集合を直和に分割できる。
- 逆に、直和分割 $a = \bigsqcup b$ が存在するときは、これをもとに同値関係を定義できる: $x \sim y \iff \exists z \in b (x \in b \land y \in b).$
ここから整数(の加法群)を定義するための助走のような定義が続く。
-
準正則元:半群 $(A, \cdot)$ の元 $x \in A$ が演算 $\cdot$ に関して、次の条件を満たすときにそう呼ぶ:
\[\forall y \forall z (xy = xz \implies y = z) \land (yx = zx \implies y = z).\]- コメント:$A$ が群ならば単位元は準正則元といえる。ところが半群には一般には単位元がない。
- コメント:$A$ が単位的半群 a.k.a モノイドならば正則元は準正則元だ。
- $(\N, \cdot)$ において、0 は準正則元ではない。
- 全準正則部分半群:半群 $(A, \cdot)$ の準正則元をすべて集めたもの。
- 空集合である可能性があるが、その場合はこう呼ばないことにする。
- コメント:それが部分半群になるか確かめること。
- 準正則部分半群:全準正則部分半群の部分半群となる集合をいう。
- (Th 3.3) 可換半群とその準正則部分半群から定まる同値関係
- 仮定:
- $(A, \cdot)$ を可換半群、
- $B \subset A$ を $A$ の準正則部分半群、
- $f = \lbrace((x, y, (x’, y’)) \in (A \times B)^2\,\mid\,xy’ = x’y\rbrace$ を関係とする。
- 結論:$f$ は同値関係である。
- 証明:想像に任せる(三律を確認するだけだろう)。
- コメント:すぐ次の商半群を定義するのに必要となる。
- コメント:いかにも何かの二項演算を新たに定義したいような定理だ。
- 仮定:
- 商半群
- 商半群とは、上述の $A, B, f$ から次のようにして定義される商集合のことだ:
- 商集合 $(A \times B)/f$ が定まる。
- $(x, y) \in A \times B$ によって表されるこの商集合の代表元を $\dfrac{x}{y}$ と書く。
-
この商集合における算法を次のように定まると、可換になる:
\[\frac{x_0}{y_0} @ \frac{x_1}{y_1} = \frac{x_0 x_1}{y_0y_1}.\]
- これは単位元をもつ。
- $B$ の元 $y_0, y_1 \in B$ から表される元 $\dfrac{y_0}{y_1} \in ((A \times B)/f, @)$ はすべて正則。
- 商半群 $((A \times A)/f, @)$ は可換群。
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単位元 $e \in A \cap B$ ならば、同型 $A \cong ((A \times B)/f, @)$ が $x \longmapsto \dfrac{x}{e}$ で得られる。
$(A, \cdot)$ が単位的可換半群であり、$\forall x \in A$ が準正則であるならば、 $(A, \cdot)$ は可換群 $((A \times A)/f, @)$ の部分半群とみなせる。
では $(A, \cdot) = (\N_0, +)$ で考える。 $((\N_0 \times \N_0)/f, +)$ すなわち $\Z$ である。 これを $(\Z, +) \coloneqq \Z^+$ と書いて整数の加法群と呼ぶ。
- 商半群とは、上述の $A, B, f$ から次のようにして定義される商集合のことだ:
- $\forall a \forall b \in \N_0\left(\Z \ni \dfrac{a}{b}\right)$ を $a - b$ と書く。
- $a \in \N_0$ と $\Z \ni a - 0$ とを同一視する: $\N_0 \subset \Z.$
- $0 - a$ を $-a$ と記す。等々。以下、$\Z$ が $\N_0$ の拡張であることを確かめる(略)。
- あとは $(\Z, \cdot) = \Z^\times$ すなわち整数の乗法群の構成が残っている。
- §3.2 環、体、有理数体
- 代数学入門的な事項が多い。なるべく別の機会に回す。
- コメント:環を単位的可換群+半群+分配法則で規定している。その手があるのか。
- 単位的可換群 $(R, +)$ を環 $R$ の加法群という。ゼロを有する仮定だ。
- 半群 $(R, \cdot)$ を環の乗法半群という。ここで
- $R^\times$ が単位的ならば、$R$ は単位的環であるという。e.g. $\Z.$
- $R$ が可換ならば $R$ は可換環であるという。
-
例 3.1 半群環 a.k.a. 群環
\[R[S] \coloneqq \{f \in \operatorname{Map}(S, R)\,|\, \#\{\sigma \in S\,|\, f(\sigma) \ne 0\} < \infty\}.\] \[\begin{aligned} (f + g)(\sigma) &= f(\sigma) + g(\sigma), & \sigma \in S,\\ (f * g)(\sigma) &= \sum_{\tau\nu = \sigma} f(\tau)g(\nu), & \sigma, \tau, \nu \in S. \end{aligned}\] - 例 3.2 $R$ を整数環、$S$ を $\mathfrak S_2$ とおくと零因子や整域の概念に到達する。
- 体とは、零環ではない単位的環 $R$ であり、$R\setminus\lbrace 0\rbrace$ の任意の元が $R^\times$ の正則元であるものをいう。
- 可換体とは、体であって $R^\times$ が可換群であるものをいう。
- コメント:体は著者によって定義が異なるので注意。代数学のノートで詳しくやる予定。
- 商体とは、整域の局所環として得られる体をいう。e.g. $\mathbb{Q}$ は $\Z$ の商体である。
- 可換体とは、体であって $R^\times$ が可換群であるものをいう。
順番をあえて逆にして、局所環を定義する:
- 局所環とは、整域 $R$ と $R^\times$ の単位元を含むような準正則部分半群 $S$ により次のようにして構成される環 $R_S$ のことをいう:
- $(R_S, \cdot) \coloneqq ((R \times S)/f, \cdot).$ 実は加法を定義できる。
- $(R_S, +, \cdot)$ は単位的可換環になり、$(R, +, \cdot) \subset R_S$ は部分環とみなせる。
- $S$ の元すべてが $R_S^\times$ の正則元となる。
コメント: $S = R\setminus\lbrace 0\rbrace$ のときが重要。
- §3.3 イデアル、商環
- コメント:両側イデアルしか定義していない。代数学のテキストではないので。
- 復習:環 $R$ のイデアル $A$ が与えられたとき、$R$ に同値関係が定まる。 $R/A$ のことを剰余環 a.k.a 商環という。
- 例 3.3 準同型について示唆している?
- 例 3.4 $\Z/m\Z$
- 例 3.5 $\Z/2\Z$
- コメント:問題 3.12 の「$\Z/4\Z$ は整域にはならない」
- 復習:素イデアル、極大イデアル
- 剰余環 $R/A$ が整域 or 体であるとき、$A$ は素イデアル or 極大イデアルであるという。
- コメント:ふつうはこれは定理として述べられる。
- コメント:定理 3.5 の極大イデアルの特徴づけ。これが名の由来になっている。