桂利行著『代数学 III 体とガロア理論』第一章章末問題の答案の続き。 第一章ぶんはこのファイルで最後だ。


$(45)$ $\zeta$ を $1$ の原始 $n\;(n \gt 2)$ 乗根とする。 環の自己同型写像 $\sigma$ を次で定義される写像とし、これが生成する群を $G$ とおく。

\[\begin{array}{c} \sigma\colon \mathbb C[X, Y] & \longrightarrow & \mathbb C[X, Y]\\ X & \longmapsto & \zeta X\\ Y & \longmapsto & \zeta^{-1}Y \end{array}\]

このとき不変「環」 $\mathbb C[X, Y]^G$ を求めろ。

検討

\[\mathbb C[X, Y]^G \coloneqq \{f(X, Y) \in \mathbb C[X, Y]\,|\, \forall \tau \in G(\tau(f(X, Y)) = f(X, Y))\}.\]

$\forall \tau \in G$ に対して

  • $\tau(1) = 1.$
  • $\tau(X^n) = X^n.$
  • $\tau(Y^n) = \zeta^{-n}Y^n = Y^n.$
  • $\tau(XY) = \zeta X \zeta^{-1}Y = XY.$
  • さらによく考えると $\tau(X^sY^t) = X^sY^t\;(s, t \ge 0) \iff s - t \in (n).$ こういう $X^sY^y$ は $X^n, Y^n$ で生成されるから気にしなくていい。

これらをうまく分類し直す。

:検討内容から $\mathbb C[X, Y]^G = \mathbb C[X^n, Y^n, XY]. \quad\blacksquare$


$(46)$ $\mathbb C$ の自己同型写像全体からなる群を $G$ とする。 不変体 $\mathbb C^G$ を求めろ。

:実は超越拡大の演習問題なので本問を飛ばす。


$(47)$ $k$ を標数 $p \ne 0$ の代数的閉体、$L$ を $k$ 上の有限生成拡大体で超越次数が $n$ であるとする。

\[L^p \coloneqq \{a^p\,|\,a \in L\}\]

とおくとき、$L^p$ は $k$ の拡大体である。

さらに $L/L^p$ は代数的拡大であり、拡大次数は $p^n$ に等しい。

検討:超越拡大に関する演習問題なので飛ばす。


$(48)$ $x$ を体 $k$ 上の超越元とする。$y \in k(x)\setminus k$ を互いに素な多項式 $f(x), g(x) \in k[x]$ を用いて $y = f(x)/g(x)$ と表す。

このとき $g(x)y - f(x)$ は $k(y)$ 上既約である。 特に次が成り立つ:

\[[k(x) : k(y)] = \max\lbrace \deg f, \deg g\rbrace.\]

検討:超越拡大に関する演習問題なので飛ばす。 $k(y)$ の意味は「体 $k$ に $y$ を添加した体」でいいのか?


$(49)$ $k$ を体、$X$ を不定元とするとき $k(X)$ の $k$ 自己同型群を決定しろ。

検討:超越拡大に関する演習問題なので飛ばす。

解答例を見て思ったのは複素解析での $\mathbb C \cup \infty$ 上の一次分数変換からなる群が自己同型群であり、逆も成り立つという定理だ。 本問でもそういうことを行うようだ。

$\forall \sigma \in \operatorname{Aut}_k(k(X))$ が一次分数変換の形をとることの証明に前問の結果を用いる。


$(50)$ (Lüroth) $k(x)$ を体 $k$ 上の一変数有理関数体とする。 $M$ を $M \supsetneq k$ なる中間体とする。

このときある $\theta \in M$ が存在して $M = k(\theta).$

検討:$k(x)$ の部分体 $M$ は、それが基礎体 $k$ でないならばすべて $k(x)$ と同型だと言っている。

この問題はある超越拡大が単拡大であることを証明するものだ。 学習範囲を超越拡大にまで広げないと決めたからには本問を飛ばす。

参考: