『多様体』第二章学習ノート 3 of 4
荻上紘一著『多様体』ノート。今回も毛色が変わった題材だ。
タイプ作業の都合上、記号の一部は VS Code の snippet になっていたりするために本書と異なる。
第 2 章 曲線(続)
§ 2.3 定幅曲線
定幅曲線 (curce of constant width) とは閉曲線であって、平行な二直線で挟んだときの幅が一定であるものをいう。
物を転がすときに使われる丸太の本質は「切り口が定幅曲線である」ことにある。
Reuleaux 三角形:とは、実は三角形ではなく凸閉曲線である。 凸閉曲線であって、ある正三角形の各頂点を中心として一辺の長さを半径とする円弧からなるものだ。
(有名な図形なので画像省略)
- Reuleaux 三角形は定幅曲線である。
- Reuleaux 三角形上に中心を持つ同一半径の円の集合を考える。 この円の集合が定義する包絡線は区分的に $C^\infty$ 級の $C^1$ 曲線である。
- Reuleaux 三角形自体は区分的に $C^\infty$ 級の $C^0$ 曲線である。
Reuleaux 三角形をこのあとの議論の基本にする。
頂点の個数は $3$ でなくても構わない。正 $2n + 1$ 角形でも同様の作図により定幅曲線ができる。
一般の定幅等半径曲線円弧多角形を構成することができる。
(作図不能な環境につき画像省略)
一般の三角形から定幅曲線を構成することもできる。 三角形 $ABC$ に対して頂点 $A, B, C$ の対にある辺をそれぞれ $a, b, c$ とする。 次の円弧を繋げば定幅曲線が得られる:
- 中心が $A$ で半径が $b + c$ の円弧
- 中心が $C$ で半径が $c$ の円弧
- 中心が $B$ で半径が $c + a$ の円弧
- 中心が $A$ で半径が $a$ の円弧
- 中心が $C$ で半径が $a + b$ の円弧
- 中心が $B$ で半径が $b$ の円弧
上述の包絡線オフセットの理論(勝手に命名)があるから、三角形よりも定幅曲線のほうがより多く存在することがわかる。
命題:互いに交わる $n$ 本の直線が $2n$ 個の非有界領域を定めるとする。 このとき直線の交点に対して、適当な円弧が存在して、その和集合が定幅曲線である。
検討:$n = 3$ あたりから数学的帰納法を始める?
証明:TODO
命題:幅が $d$ である定幅曲線上の任意の二点の距離は $d$ を超えない。
検討:図示したほうが話が早いタイプの証明問題だ。
証明:与えられた定幅曲線を $\Gamma$ とする。 $\Gamma$ 上に任意に二点 $P, Q$ をとる。
$\Gamma$ を挟む一対の平行直線のうち、直線 $PQ$ に対して直交するものを考える。 $\Gamma$ は凸曲線であるので、これらの三直線の交点は二つであり、それぞれを $P^{\prime}, Q^{\prime}$ とする。
線分 $P^{\prime}Q^{\prime}$ は線分 $PQ$ を含むから $PQ \le P^{\prime}Q^{\prime} = d.$
したがって $\Gamma$ 上の任意の二点の距離は $d$ を超えないことが示された。 $\blacksquare$
命題:定幅曲線は線分を含まない。
証明:背理法により定幅曲線 $\Gamma$ が線分を含まないことを示す。
$\Gamma$ 上のある二点 $P, Q$ が存在して部分曲線 $PQ$ が線分であると仮定して矛盾を導く。
二点を含む直線 $PQ$ を考える。直線 $PQ$ に平行で、これと対になって $\Gamma$ を挟む直線 $l$ をとる。 $\Gamma$ と $l$ の共有点を $R$ とする。
$\triangle PQR$ を考えると辺 $QR, PR$ の長さの少なくともどちらか一方は辺 $PQ$ の長さより大きい。 ところがこれは前命題の結論に矛盾する。 したがって定幅曲線 $\Gamma$ 上のどの二点も、それが定める部分曲線は線分ではないことが示された。 $\blacksquare$
支持点とは、定幅曲線を描くときの円弧の中心になる点をいう。
支持直線 (supporting line) とは、定幅曲線を描くときの円弧に接する側の平行線をいう。
二重法線性 (transnormality):定幅曲線を平行線で挟むとき、支持点を結ぶ線分は平行線に垂直に交わる。
定幅曲線 $\Gamma$ の法線は、再び $\Gamma$ と交わる点においてもそこにおいて法線となる。 これを「定幅曲線は二重法線性をもつ」ということにする。
今は Euclid 平面で議論しているので「平行線で挟む」という概念が通用する。 いずれ一般の $2$ 次元多様体で定幅曲線的なものを考えるときにそれだと通じない。 そこで代わりに二重法線性をもって一般の定幅曲線を定義するのだ。
命題:二重法線性を有する凸閉曲線は定幅曲線である。
検討:挟む平行直線対を二対つくってひし形ができると主張したいが難しい。 いずれにせよ初等的な証明で済む気がする。
証明:TODO
以上