第 5 章 多様体の位相と微分形式 2/2

記号が錯綜しているので何とかしたい。

5.3 閉微分形式のポアンカレ双対(展開)

5.3.1 閉形式の外積とポアンカレ双対

  • \(M\) の次元を \(n\) とし、\({p + q = n}\) とする。ポアンカレの双対定理と第 3 章の内容を組み合わせると次のように書ける:

    \[\H^p(M) \cong H_p(M) \cong H^q(M) \cong \H^q(M).\]

    \({\alpha \in Z^p(M)}\) に対応して \(H_p(M)\) のあるチェインが、 \({\beta \in Z^q(M)}\) に対応して \(H_q(M)\) のあるコチェインがそれぞれ対応すると考えられる。

  • 定理 5.3.1:

    • \(M\) をコンパクトかつ向き付けられた \(n\) 次元連結多様体とする。

    • \(K\)\(M\) の三角形分割とする。

    • \({\beta \in Z^q(M)}\) が定める \(Z^q(K^*)\)\(Z_p(K)\) の元を \(PD(\beta)\) とする。つまり:

      \[PD(\beta) = \sum_{\sigma \in Z_p(K)}\left(\int_{\sigma^*}\!\beta\right)\sigma\]

      と定義する。

    このとき、すべての \({\alpha \in Z^p(M)}\) に対して次が成り立つ:

    \[\int_M\!\alpha \wedge \beta = \int_{PD(\beta)}\!\alpha.\]

    証明は後ほど与える。

  • \(PD(\beta)\) の構成にはポアンカレ双対定理による同型 \({H^q(K^*) \cong H_p(K)}\) を用いている。

  • \(PD(\beta)\) がサイクルであることは、\({\partial(PD(\beta)) = 0}\) であることが 補題 5.2.6 の等式とストークスの定理から言える。

  • 注意 5.3.2: \(PD(\beta)\)\(M\) の三角形分割の \(p\) 次元サイクルとしてとられている。

  • 例 5.3.3:

    • (1) \(M_1, M_2\) を向き付けられた \(m_1, m_2\) 次元コンパクト多様体とする。

      • \({\alpha_i \in \varOmega^{m_i}(M_i)}\quad{(i = 1, 2)}\)\(\displaystyle {\int_{M_i}\!\alpha_i = 1}\) を満たす微分形式とする。

      • 直積多様体から各多様体への射影を \(\fn{\pi_i}{M_1 \times M_2}M_i\quad{(i = 1, 2)}\) とする。

      このとき \(\displaystyle{\int_{M_1 \times M_2}\!\pi_1^*\alpha_1 \wedge \pi_2^*\alpha_2 = 1}\) が成り立つ。

      \(\pi_2^*\alpha_2\) のポアンカレ双対は、ある \({x_2 \in M_2}\) が存在して部分多様体 \({M_1 \times \set{x_2}}\) で与えられる:

      \[PD(\pi_2^*\alpha_2) = M_1 \times \set{x_2}\]
    • (2) \({T^n = \RR^n/\ZZ^n}\) とする。

      閉形式 \({\dd x_{i_1} \wedge \dotsb \wedge \dd x_{i_p} \in Z^p(T^n)}\quad{(i_1 \lt \dotsb \lt i_p)}\) のポアンカレ双対は次で与えられる:

      \[\begin{split}\sgn\begin{pmatrix} 1 & \cdots & \cdots & \cdots & n\\ j_1 & \cdots & j_{n - p} & i_1 & \cdots i_p \end{pmatrix} T_{j_1 \cdots j_{n - p}}^{n - p}.\end{split}\]

      ただし:

      • \({\set{i_1, \dotsc, i_p} \cup \set{j_1, \dotsc, j_{n - p}} = \set{1, \dotsc, n}\quad(j_1 \lt \dotsb \lt j_{n - p})}\)

      • \({T_{j_1 \cdots j_{n - p}}^{n - p} = (\RR e_{j_1} \oplus \dotsb \oplus \RR e_{j_{n - p}})/(\ZZ e_{j_1} \oplus \dotsb \oplus \ZZ e_{j_{n - p}})}\)

  • 定理 5.3.4: カップ積は非退化双線型形式である

    • \(M\) をコンパクトな向き付け可能な \(n\) 次元多様体であり、

    • \({n = p + q}\) と書くとき、

    カップ積 \(\fn{\cup}{\H^p(M) \times \H^q(M)}\H^n(M)\) は非退化双線型形式である。

    1. 定理 5.3.1 の右辺 \(\H^p(M)\)\(H_p(M)\) が双対空間であることから、これらの元の積は非退化である。

    2. 定理 5.3.1 の左辺を \(\H^p(M)\)\(\H^q(M)\) の間の積とみると、それも非退化である。

    3. 定理 2.9.6 により、主張は正しい。

  • 注意 5.3.5:

    • \(\fn{\cap}{H^q(M) \times H_n(M)}H^p(M)\)\(\RR\) 係数のホモロジー群、コホモロジー群について \({\langle[\alpha] \cup [\beta], [M]\rangle} = {\langle[\alpha], [\beta] \cap [M]\rangle}\) であるように定義される。

    • \({[PD(\beta)] = [\beta] \cap [M].}\)

  • 例題 5.3.6: コンパクト連結向き付け可能二次元多様体の一次元ホモロジー群は偶数次元である

    カップ積 \(\fn{\cup}{\H^1(M) \times \H^1(M)}\H^2(M)\quad{(\cong \RR)}\) を考える。

    1. 定理 5.3.4 により、このカップ積は非退化である。

    2. このカップ積は交代形式である。なぜなら、定義 2.9.5 によると、このカップ積が \(Z^1(M)\) 同士の積から導かれたものであるからだ。

    3. ここがわからないのだが、1. と 2. のような双線型形式が存在するには、 \({\dim \H^1(M)}\) が偶数であることが必要である。

      線形代数的な考察によるらしい。このカップ積は \({\alpha \cup \beta = {}^t\!aAb}\) なる実交代行列 \(A\) で表現されて、その固有値の性質を理解すればよいと言っている。

  • 問題 5.3.7: コンパクト向き付け可能 \({4k + 2}\) 次元多様体のオイラー標数は偶数である

    問題 5.2.9例題 5.3.6 を混ぜたような問題だ。

    1. \(M\)\({4k + 2}\quad{(k \ge 0)}\) 次元コンパクト向き付け可能多様体とし、オイラー標数を実際に計算する:

      \[\begin{split}\begin{align*} \chi(M) &= \sum_{p = 0}^{4k + 2}(-1)^p\dim H^p(M)\\ &= \left(\sum_{p = 0}^{2k} + \sum_{p = 2k + 1}^{2k + 1} + \sum_{p = 2k + 2}^{4k + 2}\right)((-1)^p\dim H^p(M))\\ &= \sum_{p = 0}^{2k}(-1)^p\dim H^p(M) + (-1)^(2k + 1)\dim H^{2k + 1}(M) + \sum_{p = 2k + 2}^{4k + 2}(-1)^p\dim^{4k + 2 - p}(M)\\ &= 2 \sum_{p = 0}^{2k}(-1)^p\dim H^p(M) + \dim H^{2k + 1}(M). \end{align*}\end{split}\]
    2. したがって \({\dim H^{2k + 1}(M) \in 2\ZZ}\) を示せば十分。

      カップ積 \(\fn{\cup}{\H^{2k + 1}(M) \times \H^{2k + 1}(M)}\H^{4k + 2}(M) \cong \RR\) を考えることによって、例題 5.3.6 と同じ論理により求める次元は偶数である。

5.3.2 単体的ドラーム理論と閉形式のポアンカレ双対

  • この節で 定理 5.3.1 を証明する。

    • \(\alpha, \beta\) のドラーム・コホモロジー類をそれぞれ \(\bar\alpha, \bar\beta\) とすると、この定理で主張する等式が成り立つことは、次の等式が成り立つことと同値である:

      \[\int_M\!\bar\alpha \wedge \bar\beta = \int_{PD(\bar\beta)}\!\bar\alpha.\]
    • 定理 3.3.7 の証明を利用する。以下、標準 \(k\) 形式を \(\omega_{i_0 \dots i_k} \in \varOmega^k(K)\) で表す。

    • また、\(\bar\alpha, \bar\beta\) の展開式を次のように表す:

      \[\begin{split}\begin{align*} \bar\alpha &= \sum_{i_0 < \dotsb i_p}\left( \int_{\langle e_{i_0} \dots e_{i_p}\rangle}\!\alpha\right) \omega_{i_0 \dots i_p},\\ \bar\beta &= \sum_{j_0 < \dotsb j_q}\left( \int_{\langle e_{j_0} \dots e_{j_q}\rangle}\!\beta\right) \omega_{j_0 \dots j_q},\\ \end{align*}\end{split}\]
  • 補題 5.3.8: 上述の外積の積分に関する準備

    • \({n = p + q}\) とする。

    • \({I = \set{i_0, \dotsc, i_p},}\ {J = \set{j_0, \dotsc, j_q},}\ {L = \set{l_0, \dotsc, l_n}}\) をいずれも相異なる昇順の添字の集合とする。

    • \({I \subset L}\) かつ \({J \subset L}\) であるとする。

    • \({\omega_I \coloneqq \omega_{i_0 \dots i_p} \in \varOmega^p(\sigma_L)}\), \({\omega_J \coloneqq \omega_{j_0 \dots j_q} \in \varOmega^q(\sigma_L)}\) とする。

    このとき次のことが成り立つ:

    • Case 1: \({\Abs{I \cap J} \ge 2}\implies{\omega_I \wedge \omega_J = 0.}\)

    • Case 2: \({\set{i_s = j_r} = I \cap J}\implies{(L = I \cup J \iff i_s = j_r = l_{s + r})}\) かつ次の等式が成り立つ:

      \[\begin{split}\int_{\sigma_L}\!\omega_I \wedge \omega_J = (-1)^{s + r} \sgn\begin{pmatrix} L\setminus\set{l_{s + r}}\\ (I\setminus\set{i_s})(J\setminus\set{j_r}) \end{pmatrix} \frac{p!q!}{(n + 1)!}\end{split}\]
    1. Case 1 をさらに二つの場合に分けて証明する。

      \({\Abs{I \cap J} \gt 2}\) ならば次の二つの微分形式の両方に含まれる添字 \({l \in (I\setminus\set{i_s})(J\setminus\set{j_r})}\) が存在する:

      \[\begin{split}\begin{align*} t_{i_s}\,\dd t_{i_0} \wedge \overset{\text{pop }\dd x_{i_s}}{\dotsb} \wedge \dd t_{i_p}\\ t_{j_r}\,\dd t_{j_0} \wedge \overset{\text{pop }\dd x_{j_r}}{\dotsb} \wedge \dd t_{j_q} \end{align*}\end{split}\]

      ゆえに \({\omega_I \wedge \omega_J = 0.}\)

    2. Case 1 の後半を証明する。

      \({\Abs{I \cap J} = 2}\) ならば、添字 \({i_s = j_r \lt i_{s'} = j_{r'}}\) で、\({I \cap J}\) に含まれるようなものが存在する。外積を展開することを考えると(式内の丸括弧部分は 1. のような微分形式のメイン部分):

      \[\begin{split}\begin{align*} \omega_I \wedge \omega_J &= p! q! (-1)^{s + r'}t_{i_s}t_{j_{r'}} (\text{pop }\dd x_{i_s} \text{ and } \dd x_{j_{r'}})\\ &\quad + p! q! (-1)^{s' + r}t_{i_{s'}}t_{j_r} (\text{pop }\dd x_{i_{s'}} \text{ and } \dd x_{j_r}) \end{align*}\end{split}\]

      このとき微分形式メイン部分の添字の順序を例えば \(i_0\dots i_p j_0 \dots j_{r-1} j_{r+1}\dots i_{r'-1}i_{r'+1}\dots {j_q}\) のように揃えることを考えると、

      • 第一項の符号は \((-1)^p\) で、

      • 第二項の符号は \((-1)^{p - 1}\) のようになる。

      ゆえに \({\omega_I \wedge \omega_J = 0.}\)

    3. Case 2 を証明する。

      • 外積の展開式を三項に分ける:

        \[\begin{split}\begin{align*} \omega_I \wedge \omega_J &= p! q! (-1)^{s + r} t_{i_s}t_{j_r}\,\dd t_{i_0} \wedge \overset{\text{pop }\dd x_{i_s}}{\dotsb} \wedge \overset{\text{pop }\dd x_{j_r}}{\dotsb} \dd t_{j_q}\\ &\quad + p! q! \sum_{k = 0,\ \ne r}^q (-1){s + k} t_{i_s}t_{j_k}\, \dd t_{i_0} \wedge \overset{\text{pop }\dd x_{i_s}}{\dotsb} \wedge \overset{\text{pop }\dd x_{j_k}}{\dotsb} \dd t_{j_q}\\ &\quad + p! q! \sum_{k = 0,\ \ne s}^q (-1){k + r} t_{i_k}t_{j_r}\, \dd t_{i_0} \wedge \overset{\text{pop }\dd x_{i_k}}{\dotsb} \wedge \overset{\text{pop }\dd x_{j_r}}{\dotsb} \dd t_{j_q}. \end{align*}\end{split}\]
      • この第二項の外積後半部 \({\dd t_{j_r}}\)\(\displaystyle {-\sum_{l \ne j_r} \dd t_l}\) を、第三項の外積前半部 \({\dd t_{i_s}}\)\(\displaystyle {-\sum_{l \ne i_s} \dd t_l}\) をそれぞれ代入していく。

      • 結果的に次のように書ける:

        \[\omega_I \wedge \omega_J = (-1)^{s + r}p! q! t_{i_s}\, \dd t_{i_s} \wedge \dd t_{i_0} \wedge \overset{\text{pop }\dd x_{i_s}}{\dotsb} \wedge i_p \wedge j_0 \wedge \overset{\text{pop }\dd x_{j_r}}{\dotsb} \wedge j_q.\]
      • これを利用して:

        \[\begin{split}\begin{align*} \int_{\sigma_L}\!\omega_I \wedge \omega_J &= \sgn\begin{pmatrix} L\setminus\set{l_{s + r}}\\ (I\setminus\set{i_s})(J\setminus\set{j_r}) \end{pmatrix} \int_{\sigma_L}\!\ (-1)^{s + r} p! q! t_{l_{s + r}} \dd t_{l_0} \wedge \overset{\text{pop }\dd t_{l_{s + r}}}{\dotsb} \wedge \dd t_{l_n}\\ &= \sgn\begin{pmatrix} L\\ IJ \end{pmatrix} \frac{p! q!}{(n + 1)!}. \end{align*}\end{split}\]

      ただし最後の等号に次の 問題 5.3.9 を利用する。

    以上により、積分 \(\displaystyle \int_{\sigma_L}\!{\omega_I \wedge \omega_J}\) が求まった。

  • 問題 5.3.9: 上の証明の一部

    \[\int_{\sigma_L}\!(-1)^l t_{i_l}\, \dd t_{i_0} \wedge \overset{\text{pop }\dd t_{i_l}}{\dotsb} \wedge \dd t_{i_n} = \frac{1}{(n + 1)!}.\]

    定義に戻って積分を計算するしかない。3.2 節 (p. 95) と 3.3.3 節 (p. 106) が参考になる。

    \[\begin{split}\begin{align*} \int_{\sigma_L}\!(-1)^l t_{i_l}\, \dd(1 - t_1) \wedge \dd(t_1 - t_2) \wedge \overset{\text{pop }\dd(t_l - t_{l + 1})}{\dotsb} \wedge \dd(t_n) &= \int_{\sigma_L}\!(-1)^l (t_l - t_{l + 1})(-1)^l \dd t_1 \wedge \dotsb \wedge \dd t_n\\ &= \int_{t_1 = 0}^{t_1 = 1}\! \int_{t_2 = 0}^{t_2 = t_1}\! \dotsi \int_{t_n = 0}^{t_n = t_{n - 1}}\! (t_l - t_{l + 1})\,\dd t_n \dots \dd t_1\\ &= \frac{n - l + 1}{(n + 1)!} - \frac{n - l}{(n + 1)!}\\ &= \frac{1}{(n + 1)!}. \end{align*}\end{split}\]
    • 最初の等号は各外微分を展開することによる。

    • 次の等号は、体積形式の単体に沿う積分の定義による。

    • その次の等号は単純な多項式(単項式)の累次積分の展開に過ぎないのだが、実は計算が合わないで困っている。

  • 補題 5.3.10: 積分に関するさらなる等式

    • \(I, J, L\) をこれまでのものと同じ添字の集合とする。ただし \({I \subset L,\ J \subset L}\) であるとする。

    • \(M\) を向き付けられた \(n\) 次元多様体であるとする。

    • \(K\)\(M\) の三角形分割であるとする。

    • \({\sigma_I = \langle e_{i_0} \dots e_{i_p}\rangle \in K}\) とおく。

    • \({\sigma_L = \langle e_{l_0} \dots e_{l_n}\rangle \prec \sigma_I^*}\) とおく。

    • \({\sigma_I^*|\sigma_L}\) で部分単体を表すものとする。

    このとき次の等号が成り立つ:

    \[\int_{\sigma_I^*|\sigma_L}\!\omega_J = \sgn_M(\sigma_L)\int_{\sigma_L}\!\omega_I \wedge \omega_J.\]

    証明はかなりの手間がかかる。

    1. \({\Abs{I \cap J} \ge 2}\) のときは \({\omega_J|(\sigma_I^*|\sigma_L) = 0}\) となって左辺はゼロである。一方 補題 5.3.8 により右辺もゼロである。

      • \({\sigma_I^*|\sigma_L}\) の単体は、ある単体の列 \({\sigma_I = \tau^q \prec \tau^{q + 1} \prec \dotsb \prec \tau^{q + p} = \sigma_L}\) が存在して、各重心頂点を用いて \({\langle b_{\tau^q}b_{\tau^{q + 1}}\dots b_{\tau^{q + p}}\rangle}\) の形になる。

        • \(\sigma_I\)\(\sigma_I^*\) を取り違えないように注意。

      • \({j_r, j_{r'} \in I \cap J\quad(j_r \ne j_{r'})}\) とする。上述の重心頂点を用いた単体は、重心座標について \({t_{j_r}\quad(= t_{j_{r'}})}\) で表される \(\sigma_L\) の部分空間上にある。

        • ここ、すぐに理解できるか?

      • 標準 \(q\) 形式 \(\omega_{j_1 \dots j_q}\) の展開式において、 \(\displaystyle {t_{j_k} = 1 - \sum_{v \ne k}t_{j_v}}\)\({t_{j_k} \ne t_{j_r}, t_{j_{r'}}}\) のところに代入すると外積 \({\dd t_{j_r} \wedge \dd t_{j_{r'}}}\) を含む。よってゼロである。

        • ここ、計算して確認していない。

    2. 二つの単体 \({\sigma_I = \langle e_{i_0} \dots e_{i_p}\rangle}\)\({\sigma_J = \langle e_{j_0} \dots e_{j_q}\rangle}\) がただ一つの頂点 \({i_s = j_r}\) を共有している場合は以下のようになる。

      • \({I \cup J = L.}\)

      • \(\sigma_I^*\) に現れる \({\bsd(K) \cap \sigma_L}\) の単体を記述したい。

        • \({A = a_0\dots a_q}\)\(J\) の置換であり \({a_0 = i_s}\) であるものとする。

        • \(\displaystyle \sigma_A = {\langle e_{a_0}\dots e_{a_q}\rangle} = {\sgn\begin{pmatrix}J\\A\end{pmatrix}\sigma_J}\) とおく。

      • \({w = 0, \dotsc, q}\) に対して \({\tau^{p + w} = \langle e_{j_0} \dots e_{j_q} e_{a_1}\dots e_{a_q}\rangle}\) とする。

        • \({\tau^p = \sigma_I}\) である。\({a_0 = i_s,\ e_{a_0} = e_{i_s}}\) による。

        • \(\tau^{p + w}\) の重心は次で表される:

          \[b_{\tau^{p + w}} = \frac{1}{p + w + 1} \left(\sigma_{u = 0}^p e_{i_u} + \sigma_{v = 1}^w e_{a_v}\right).\]
    3. 標準 \(q\) 形式 \(\omega_J\) の 1. の単体に沿う積分を計算する。

      • \({b_{\tau^{p + w}} - b_{\tau^{p + w - 1}}}\) を計算しておく:

        \[b_{\tau^{p + w}} - b_{\tau^{p + w - 1}} = -\frac{1}{(p + w)(p + w + 1)} \left(\sigma_{u = 0}^p e_{i_u} + \sigma_{v = 1}^{w - 1} e_{a_v}\right) + \frac{1}{p + w + 1} e_{a_w}.\]
        • 本書の数式、符号が間違っていると思われる。後続の数式からしても、初項にはマイナスが要る。

      • この積分は次の写像 \({(x_1, \dotsc, x_q) \longmapsto ?}\) により \(\Delta^q\) に引き戻した \(q\) 形式の積分である:

        \[\begin{split}\begin{align*} (x_1, \dotsc, x_q) \longmapsto & \frac{1}{p + 1}\sum e_{i_u}\\ & + x_1(b_{\tau^{p + 1}} - b_{\tau^{p}})\\ & + x_2(b_{\tau^{p + 2}} - b_{\tau^{p + 1}})\\ & \dots\\ & + x_q(b_{\tau^{p + q}} - b_{\tau^{p + q - 1}}) \end{align*}\end{split}\]
      • \(\omega_J\) の表示に現れる重心座標 \({t_{i_0} \dots t_{i_p} t_{a_0} \dots t_{a_q}}\) を求めておくことで \(\displaystyle {(p + 1)t_{a_0} + \sum_{v = 1}^q t_{a_v} = 1}\) がわかる。

      • さらに \(\displaystyle {\dd t_{a_0} = -\sum_{v = 1}^q \frac{\dd t_{a_v}}{p + 1}.}\)

      • \(\omega_A\) を展開する:

        \[\begin{split}\begin{align*} \omega_A &= q! \sum_{w = 0}^q (-1)^w t_{a_w}\,\dd t_{a_0} \wedge \overset{\text{pop }\dd t_{a_w}}{\dotsb} \wedge \dd t_{a_q}\\ &= \frac{q!}{p + 1}\frac{\dd x_1}{p + 2} \wedge \dotsb \wedge \frac{\dd x_q}{p + q + 1}. \end{align*}\end{split}\]
      • ここで \(\displaystyle {\int_{\Delta^q}\!\dd x_1 \dots \dd x_q = \dfrac{1}{q!}}\) であるから:

        \[\begin{split}\begin{align*} \int_{\langle b_{\tau^q}b_{\tau^{q + 1}}\dots b_{\tau^{q + p}}\rangle}\!\omega_A &= \int_{\Delta^q}\!\frac{q!}{p + 1}\frac{\dd x_1}{p + 2}\dotsm \frac{\dd x_q}{p + q}\\ &= \frac{p!}{(p + q + 1)!}. \end{align*}\end{split}\]
      • \(\displaystyle {\omega_A = \sgn\begin{pmatrix}A\\J\end{pmatrix}\omega_J}\) を用いて次を得る:

        \[\begin{split}\begin{align*} \int_{\langle b_{\tau^p} \dots b_{\tau^{p + q}}\rangle}\! \omega_J &= \sgn\begin{pmatrix}A\\J\end{pmatrix}\frac{p!}{(p + q + 1)!}\\ &= (-1)^r \sgn\begin{pmatrix} A\setminus\set{a_0}\\ J\setminus\set{j_r} \end{pmatrix} \frac{p!}{(p + q + 1)!} \end{align*}\end{split}\]
    4. \(A\)\({I \cap A = \set{i_s}}\) となる \(J\) の置換とする。

      • \({A = a_1 \dots a_q}\) のように書く。

      • \(L\) の置換を \({i_0 \dots i_p a_1 \dots a_q}\) のように書く。

      • 単体の列 \({\tau^p \prec \dotsb \prec \tau^{p + q}}\) をとることで、 \({\sigma_I^*|\sigma_L}\) における双対胞体 \(\sigma_I^*\) は次の和で表される:

        \[\langle e_{i_0} \dots e_{i_p}\rangle^* = \sum_A \sgn_M (\langle e_{i_0} \dots e_{i_p} e_{a_1} \dots e_{a_q}\rangle) \langle b_{\tau^q}b_{\tau^{q + 1}}\dots b_{\tau^{q + p}}\rangle \quad(A = a_1\dots a_q).\]
      • 次の積分を 3. の結果を用いて計算する:

        \[\begin{split}\begin{align*} \int_{\langle e_{i_0} \dots e_{i_p}\rangle^* | \sigma_L}\!\omega_J &= \sum_A \sgn_M (\langle e_{i_0} \dots e_{i_p} e_{a_1} \dots e_{a_q}\rangle) \langle b_{\tau^q}b_{\tau^{q + 1}}\dots b_{\tau^{q + p}}\rangle (-1)^r \sgn\begin{pmatrix} A\setminus\set{a_0}\\ J\setminus\set{j_r} \end{pmatrix} \frac{p!}{(p + q + 1)!}\\ &= \sum_A \sgn_M(\sigma_L) (-1)^r \sgn\begin{pmatrix} l_0 \dots l_{p + q}\\ I J\setminus\set{j_r} \end{pmatrix} \frac{p!}{(p + q + 1)!}\\ &= \sgn_M(\sigma_L)\sgn\begin{pmatrix} L\setminus\set{l_{s + r}}\\ I\setminus\set{i_s} J\setminus\set{j_r} \end{pmatrix} \frac{p!}{(p + q + 1)!}\\ &= \sgn_M(\sigma_L)\int_{\sigma_L}\!\omega_I \wedge \omega_J. \end{align*}\end{split}\]
        • 最後から二番目の等号では、\(r, s, l\) の関係によって \((-1)^?\) のようなものは消えている。

        • 最後の等号に 補題 5.3.8 を用いた。

    これで主張の等式が成り立つことが示された。

ここまできてようやく 定理 5.3.1 の証明を始める。

  1. \(\bar\alpha = \displaystyle \sum_{i_0 \lt \dotsb \lt i_p} \alpha_{i_0 \dots i_p}\omega_I\), \(\bar\beta = \displaystyle \sum_{j_0 \lt \dotsb \lt j_q} \beta{j_0 \dots j_q}\omega_J\) とおく。

  2. 次の和を基本類 \([M]\) を代表するものとする:

    \[\sum_{l_0 \lt \dotsb \lt l_n}\sgn_M(\langle e_{l_0}\dots e_{l_n}\rangle) \langle e_{l_0}\dots e_{l_n}\rangle.\]
  3. 左辺を計算する:

    \[\begin{align*} \int_M\!\bar\alpha \wedge \bar\beta &= \sum_{l_0 \lt \dotsb \lt l_n}\sum_{i_0 \lt \dotsb \lt i_p}\sum_{j_0 \lt \dotsb \lt j_q} \sgn_M(\langle e_{l_0}\dots e_{l_n}\rangle)\alpha_{i_0 \dots i_p}\beta_{j_0 \dots j_q} \int_{\langle e_{l_0}\dots e_{l_n}\rangle}\!\omega_I \wedge \omega_J. \end{align*}\]
  4. \({PD(\bar\beta)}\) を右辺に代入したい。

    \[\begin{split}\begin{align*} PD(\bar\beta) &= \sum_{A}\left(\int_{\sigma_A^*}\!\sum_{j_0 \lt \dotsb \lt j_q}\beta_{j_0 \dots j_q}\omega_J\right)\sigma_A\\ &= \sum_{A}\sum_{j_0 \lt \dotsb \lt j_q}\beta_{j_0 \dots j_q}\left(\int_{\sigma_A^*}\!\omega_J\right)\sigma_A \end{align*}\end{split}\]

    であるから、

    \[\begin{split}\begin{align*} \int_{PD(\bar\beta)}\!\bar\alpha\\ &= \int_{PD(\bar\beta)}\!\sum_{i_0 \lt \dotsb \lt i_p}\alpha_{i_0 \dots i_p}\omega_I\\ &= \sum_{i_0 \lt \dotsb \lt i_p}\alpha_{i_0 \dots i_p} \int_{PD(\bar\beta)}\!\omega_I\\ &= \sum_{i_0 \lt \dotsb \lt i_p}\sum_{A}\sum_{j_0 \lt \dotsb \lt j_q} \alpha_{i_0 \dots i_p}\beta_{j_0 \dots j_q} \left(\int_{\sigma_A^*}\!\omega_J\right)\int_{\sigma_A}\!\omega_I. \end{align*}\end{split}\]
  5. ここで 4. の末端の積分の値は次のようになる:

    \[\begin{split}\int_{\sigma_A}\!\omega_I = \begin{cases} 1 & \quad\text{if }A = I,\\ 0 & \quad\text{if }A \ne I. \end{cases}\end{split}\]
    • \({A = I}\) については p. 106 を参照。

    • \({A \ne I}\) については \({\omega_I|\sigma_A}\)\({A \cap I}\) を添字とする重心座標で書かれていることによる。

  6. したがって 4. の式変形を続けると:

    \[\begin{split}\begin{align*} \dots &= \sum_{i_0 \lt \dotsb \lt i_p}\sum_{j_0 \lt \dotsb \lt j_q} \alpha_{i_0 \dots i_p}\beta_{j_0 \dots j_q} \left(\int_{\sigma_I^*}\!\omega_J\right)\\ &= \sum_{i_0 \lt \dotsb \lt i_p}\sum_{j_0 \lt \dotsb \lt j_q} \alpha_{i_0 \dots i_p}\beta_{j_0 \dots j_q} \sum_{l_0 \lt \dotsb \lt l_n}\int_{\sigma_I^*|\sigma_L}\!\omega_J. \end{align*}\end{split}\]

    \({J \nsubseteq L}\) のときは \({\omega_J|\sigma_L = 0}\) である。なぜならば \({J \cap L}\) を添字とする重心座標で書かれているからだ。

  7. 補題 5.3.10 を用いると、最終的に 3. における左辺の変形と一致する。

5.4 第 5 章の解答

上に書いた。